背もたれが折れてしまったいすの修理
- 渡辺木工

- 6月28日
- 読了時間: 3分

ぼきっと真ん中で折れてしまったいすを見て
お客様はびっくりされて、きっとそれから
がっかりしたと思います
でも”直そう!”と作業場までお持ち頂いたことに感謝したいと思います
どんなケースでも、もしうまく修理できたら
またいすとして長く使えるわけですからね

このいすの背もたれはいくつかの木のブロックを寄木細工のように組みあわせたあとで
曲線に切り抜き仕上げられています
大変な手間を加えて綺麗なフォルムを構成しているのですが、寄木で組んであるのでどうしても所々”目切れ”と言って木の繊維を断ち切っている箇所があり、そこは使用中の衝撃にたいしてとても弱くなってしまいます

お客様の方で座面を新しく張り替えてからあまり時間が経っていない様なので、座面は剥がして張り替えるのはもったいないのでそのまま生かします
そこで接着剤や着色剤、塗料が飛ばないように養生をしておきます

接着剤を効かせるためにはなるべく接着面をぴったりすり合わせるのが大切なのですが、そのためクランプなどの道具を使って強い力で締めこみます
今回は構造材に斜めにひび割れしているので数か所いろいろな方向から締めてみて、圧力に負けてひび割れに沿って滑ったりズレが起きない様にまず一度接着剤を塗らずに何回かクランプの位置を変えて合わせ目が安定するところを探します
クランプの位置が決まったら接着本番です
接着したら安定した強度が出るように3日ほど固定したままにします

ひび割れた箇所が完全に固まってから補強のため、目立たないところから木の丸棒を打ち込みます
まずひびの面に対して直行するように細いドリルで下穴をあけた後で太い木工用のキリで穴を広げて精度を出し、旋盤で作った丸棒を確実に穴の奥まで届くように打ち込みます
あとははみ出た部分をのこぎりとかんなで削り取り、補修として少しだけ着色、塗装をしておきます

海外で作られたらしい、と聞いていたのでひょっとしたらと思い確認すると昔ながらのラッカー塗装でした
ラッカーの良いところは手直ししやすいところです 透明ですが少し黄色みがかっているので、それに気を付けて下地に着色するときに黄色を少し減らすところさえ押さえれば良いと思います
このいすは現代の自動制御の機械だけでは作れません 職人さんが1脚1脚組み立てたもので、この美しいラインにも人の手が入ったあとがところどころ見られます
いまの日本だとなかなか作れない逸品です どうか長く使い続けられますように




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