鳥取家具工業社のダイニングチェア
- 渡辺木工

- 2月2日
- 読了時間: 2分
更新日:2月4日

どんなに丁寧に使っていたとしても20年30年経つと歪みや軋みが出てしまうのが木の椅子です
多いのが写真の様に長年揺り動かされてきたことと経年の接着剤の劣化でほぞ組みが抜けてしまうことです
緩んだままにしておくとほぞ組みも痩せて細くなりますし、場合によっては折れてしまうこともあります
椅子にがたつきが出てきたら早めの修理をお勧めします
ほぞ組の椅子は一度分解して糊打ちして組み直せば元通りになるのが良い所です

まずは出来る限り分解してみます
部品と部品の組み合わさっているところを当て木を当てて軽く叩いて少しずつ抜いていきます
長く使っていると乾燥して脆くなる樹種もありますから無理して抜こうとすると割れてしまうこともありますので慎重に作業を進めます

一度外した部品は古くなった接着剤を丁寧に削り落とした後にほぞ組部分に蒸気をあてて潰れた差し込み部分を膨らませます
きれいに整えたほぞ組に接着剤をつけて組み立ててバイスを使って圧締します

組みあがったら座面を取り付ける前にあちこちについている傷にステインを差して目立たなくしておきます
組み上げて見直すと良い艶が出ているのに気づきました
この艶は新たに塗装し直して得られるものではありません
傷にほどこした着色剤が落ちないように色押えをしただけで仕上を終えます 外した座面を取り付けて完成です

座面を支える枠が大きく反りあがり背まで繋がる美しいラインを描いています
ブナの太い無垢の材料を蒸気と高い圧力で曲げる曲木の技術、細い部材を組み合わせながらも強度と耐久性を持たせる木組みの加工技術の裏打ちがあってこそこのような美しい椅子が生まれたんですね
機能美の過度な追及への反発が生んだポストモダン的なデザイン風潮と高度経済成長期が重なった1970年代から80年代に生まれた木製品は昭和の光と風を感じさせます
有名メーカーだけではなく沢山の家具工場から有名無名問わず美しい家具が作られた時代だったのでしょうね




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